巨人のシチューハウスの物語

むかしむかし、アイルランドという国にたくさんのケルト人の巨人戦士がいました。

その中にアランマクアンイースカラ(漁師の息子アラン)という心のやさしい巨人がいました。アランは若くて背は2メートルくらいありましたが、巨人の中では年のわりに小さかったのです。そのため仲間たちが冒険の旅に出るときは、いつも置いてけぼりでした。

そこでアランは冒険の旅に行くかわりに、伝説のフィーナ達のためにおいしいシチューを作ることにしました。フィーナたちは狩りの行き帰りに、大きな森の横のアランの家の前をよく通りかかるのでした。

フィーナというのはケルト人の巨人戦士の中でも一番勇敢で有名な軍団です。賢くて強いフィンマクールという巨人がそのリーダーです。アランはフィーナが大好きで、彼らが来るのをいつも楽しみにしていました。なぜって、彼らはアランの家で食事をする時、いつも偉大な戦いや冒険の話を聞かせてくれるからです。彼らの話を聞きながら、アランはいつも自分も彼らと一緒に旅をしているような気分になっていました。

ある日の夕がた、一日がかりの狩りから帰ってきたフィーナのリーダーフィンマクールはとても興奮していました。彼は食事をしながらアランに、彼らが仕掛けた魔法のワナで、どのくらいうまくあの生意気なレプラコーンを捕まえたかを話してくれました。レプラコーンというのは、人間の子どもより少し小さくて、いつも人間にイタズラをしたり冗談を言ったりして暮らすアイルランドの妖精のことです。

かれこれ何週間か前のことですが、エナという名前のレプラコーンは、ちょっとしたイタズラを思いつきました。それは、毎晩、あのフィンマクールの夢の中に入っていって、バウロン(ケルトの太鼓)を叩いてやろうというものでした。もし、それでフィンマクールが眠れなくなったら、どんなに愉快だろうというものでした。

アイリッシュレプラコーンのイメージ   「エナとのバウロン」

アイリッシュレプラコーンのイメージ   「エナとのバウロン」

アイリッシュバウロンドラム

アイリッシュバウロンドラム

その晩フィンマクールフィーナたちが帰った後、アランはこっそり森に魔法のワナを見に行ってみようと考えました。川の近くを通りかかったとき、草むらの陰から自分を呼ぶ小さい声が聞こえました。

「漁師の息子かい? おいしいシチューを作るんだってね。」

「君はだれ!?」 アランは叫びました。

「ここだよ、早くおいでよ!!」

アランが見ると、そこにはワナにかかった小さいレプラコーンがいました。

『うわぁ、本物のレプラコーンだ!』 彼は心の中で思いました。

「ただのレプラコーンじゃないよ、ぼくの名前はエナ、笑いの王様さ。イタズラの達人でフィンマクールの夢の常連なんだよ。」

「え?君はぼくが考えていることがわかるの?」 アランは聞きました。

「もちろんさ!」 エナはずうずうしくニヤっと笑いながら答えました。

「ぼくはいろんなことができるんだ。ほんとだよ。実際のところ、もし君がぼくをこの魔法の檻から出してくれたら、君の願いを3つ叶えてあげるけどどうだい?」

アランは少しの間考えました。もし願いが3つ叶えられたら、今まで夢に見ていたことがみんな本当になるのです。冒険の旅にも行けるし、金や宝石も手に入れられて、美しい娘とも結婚もできるでしょう。

でも、もし自分がエナを逃がしたことをフィンマクールに知られたらどうなるかも心配でした。

『そんなことしたら、大変なことになるだろうな・・・。』 アランは思いました。

アランがそんなふうに思っていると、エナはそのどちらも解決できる便利な方法を提案してきました。

「アラン、わかる、わかるよ。フィンマクールは偉大で賢いフィーナのリーダーだからね。もし君がぼくを逃がしたら、すぐにバレて大変なことになるだろうね。でもだ大丈夫、ぼくにはいい考えがあるんだ。フィンマクールが強くて賢いといっても、それはアイルランドの中だけのことさ。もし君が遠く離れた国へ行ってしまえば、君の願いはぜーんぶ叶うし、フィンマクールのことを怖がる必要もないんだ。」

「本当にそんなことができるの?」  アランは夢中になって聞きました。

「もちろんだよ。」 エナは答えました。

「この指輪をしたら世界の向こう側の遠い国へ行くことができるんだ。“日本”と呼ばれるその国までは、フィンマクールの目も届かないし、冒険を楽しんだり、金や宝石を手に入れて、きれいな奥さんを見つけることもできるのさ。その国の人たちはとても人懐っこくて、きっと君の料理を気に入ってくれると思うよ。」  アランは嬉しくなって、すぐにエナのワナをはずしてやりました。

 エナはアランのところに来てお礼を言いました。

「本当にありがとう、若い巨人よ。でも一つだけ気をつけてほしいんだ。日本にいられるのはこの指輪をつけているときだけだよ。もしはずしてしまったらフィンが待っているアイルランドに戻されてしまうからね。」

アランは指輪を手にとると指につけました。

するとどうでしょう・・・アランはたちまち“日本”という遠い国にいました。

着いてすぐにアランはそこがアイルランドとは全く違う場所で、人々も全く違う言葉を話していることに気がつきました。アランはエナがワナから逃げたいばかりに自分を騙したのではないかと心配になりました。

そのとき、一人の若くて美しい娘がやって来て、アラン言いました。

「こんにちはアラン、わたしの名前はアイ、この国で金や宝石の仕事をしているの。昨日の夜、私の夢にエナっていう妖精が出てきて、あなたが今日ここへ来ることを教えてくれたのよ。そして今朝起きたら、なぜかあなたの言葉で話せるようになっていたの。」

アランはすぐに騙されたのではないということがわかりました。そして一目でアイのことが好きになってしまいました。

アランはアイと結婚し、フィンマクールの目が届かない“日本”でシチュー屋さんを開くことにしました。世界の向こう側にあるアランの国、アイルランドのおいしい料理を“日本”の人達にも紹介したかったのです。そして愉快なレプラコーンを思い出しながら、アイルランドの文化や音楽もみんなに知ってもらいたくなりました。

アランには今、アイという強い味方もできました。レプラコーンの言う通り、魔法の指輪は絶対に外さないで“日本”で幸せに暮らしていきます。指輪をはずして、フィンマクールに連れ戻されてしまったら大変ですからね・・・。

日光結婚式で家族と一緒にアラン&アイ

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お相撲さんサイズな袴

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たかい。。

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